いろいろな玉蜀黍《とうもろこし》を挽き、砂漠から砂漠へと、流れ聚《あつま》り消え去る歌を歌っているのだ。
○
種々様々な都市の特性。
若し我々が、深い洞察と知識とを以て見たら、この地球上に幾何在るか、多数の都会というものは、周囲の自然がそこに与える有形無形の恩沢と照し合わせて、明に、集合した人間の性格、生活の意向を代表しているものではないだろうか。
逆に見るとまた、或る目的を予想して集った一団の人類が、環境の自然によって、永年のうちに如何程|馴致《じゅんち》されるかということも考えられる。
アリゾナの砂漠の中心から僅か二十四時間の行程で、更に明美なカリフォルニアに入り、楽しそうな耕地と、市街の中枢まで身軽な田園の微風に吹かれているロスアンジェルスの市を見ると、自分は深くそのことを思わずにいられなかった。
自分の見た狭い範囲だけでも、紐育と華盛頓《ワシントン》、こことでは、住む人の心持から雰囲気が、まるで異っている。
嘗て、父がまだ一緒に滞留していた時分、小蒸汽で、ずっとハドソン川の上流から河口の方へと流れ下って見たことがある。内部に這入って見上げた
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