いために、床を高く、土台石の間は吹き抜けにしてある。
 空は、いかにも暖くあおく、明るい。
 赤や茶や緑や、種々な樹木は、近く見ると濃厚な色絨毯のように、遠く眺めると、ぽかぽかした雑色に、耕野の涯《はて》を区切っている。
 明に、色の交響楽を感じる。自然は、やや元始的に賑やかなのを感じる。
 けれども、その中に、ぽつねんと立っている泥色の黒人は、見る者に、何という寂寥を感じさせるだろう。北緯三十五度辺の、南部に近い温帯の眠さ。
 不思議な物懶《ものう》さと憂鬱とが、派手な、然し透明を欠く色彩に包まれて澱んでいる。永遠の晩秋。ひっそりとした風景。
 耳の長いドンキーに、沢山綿を括りつけてのろのろと黒人が影を追って行くのを見る。
 北部カロライナと、南方カロライナのちょうど境界線の上にあるブラックスブルグで、始めて、停車場に“Coloured”“White”と、別にした札を下げてあるのを見た。
 私共は、ポーターが持って来てくれた嵌《は》め込み卓子を中にして、話したり、地図を拡げて見たり、骨牌《カード》、ドミノをいじったりして、単調な一日を送った。

        四

 眠っているうち
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