て、万事の予定を崩してしまう吉報が来ていはしまいかと、朝起る毎にいい難いストレーンを感じるのだ。
心が、我知らず敏感になった。友が、今度の出来事に対して、どれだけ真実な重大《イムポータンス》さを感じてくれるか、心持の悪いほど、覚らされた。
自分が結婚を決心したときと、今のこととで、私は、平常快活な遊び仲間として、親切で愉快な友人が、しんに、どんな性格と意向をもって生活しているか少し辛辣すぎるほど、知ることが出来た。
次から次へと、深い感動の連続で、紐育を立つべき日はだんだん迫って来る。然し、五日に手紙を貰って以来、故国からは、一葉の葉書さえも来ない。いよいよ立つほかない。
朗らかな小春日和の十八日、自分はなお衷心では思い惑うような感じを抱きながら、自動車に揺られて、停車場に行った。
来年の四月頃になったら、ほんとうの書生旅行でいい、欧州へ行こうと云っていた自分等の希望は、この次何時実現されるのだろう。
闇をついて駛る列車の、明るい車室にカタカタ、カタカタ揺れ、煌く窓硝子を眺め、自分は、思わずその中に写っている良人の顔を見つめた。
同じ汽車で数日を暮すのに、また、ロッキーを
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