こんだ。素子も、随分気を張っている。秋山宇一も、何と細心に自分だけの土産でつまった土産袋をこしらえようと気をくばっていることだろう。秋山宇一は、日本の無産派芸術家である。その特色をモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]で鮮明に印象づけようとして、彼は、立場のきまっていない伸子たちと、あらゆる行動で自分を区別しているように思えた。同時に伸子たちには、彼女たちと秋山とは全く資格がちがい、したがって同じモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]を観るにしろ、全然ちがった観かたをもっているのだということを忘れさせなかった。その意識された立場にかかわらず、秋山宇一は大使館の四方拝については気にやんで、レーニングラードも早めに切り上げようとしている。秋山が短い言葉でこまかく観られている[#「こまかく観られている」に傍点]といったことの内容を直感するほどモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]に生活していない伸子には、秋山のその態度が、どっち側からもわるく思われたくない人のせわしなさ、とうけとれた。伸子は、日本にいるときからロシア生活で、ゲ・ペ・ウのおそろしさ、ということはあきるほどきか
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