道標
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)海老《えび》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)秋田|訛《なまり》のある言葉を、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]
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[#ページの左右中央]

   道標 第一部

[#改丁]


    第一章


        一

 からだの下で、列車がゴットンと鈍く大きくゆりかえしながら止った。その拍子に眼がさめた。伸子は、そんな気がして眼をあけた。だが、伸子の眼の前のすぐそばには緑と白のゴバン縞のテーブルかけをかけた四角いテーブルが立っている。そのテーブルの上に伸子のハンド・バッグだの素子の書類入鞄だのがごたごたのっていて、目をうつすと白く塗られた入口のドアの横に、大小数個のトランク、二つの行李、ハルビンで用意した食糧入れの柳製大籠などが、いかにもひとまずそこまで運びこんだという風に積みあげられている。それらが、薄暗い光線のなかに見えた。素子
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