ら在留邦人は出席するようにって――」
「――そうでしたか」
 内海は黙ったまま、すっぱいような口もとをした。
「何だか妙ねえ――四方拝だなんて――やっぱりお辞儀するのかしら……」
 困ったように、秋山は大きい眉の下の小さい目をしばたたいていたが、
「やっぱり出なけりゃなりますまいね」
 ほかに思案もないという風に云った。
「モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]にいる民間人と云えば、われわれぐらいのものだし……何しろ、想像以上にこまかく観られていますからね」
 ドーリヤのいるところで、秋山は云いにくそうに、云った。そして、残念そうに内海を見ながら、
「うっかりしていたが、そうすると、レーニングラードは三十一日にきり上げなくちゃなりますまいね」
 秋山は国賓としての観光のつづきで、レーニングラードの|ВОКС《ヴオクス》から招待されているのだそうだった。
 四階の自分の室へ戻る階段をゆっくりのぼりながら、伸子は、このパッサージというモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の小ホテルに、偶然おち合った四人の日本人それぞれが、それぞれの心や計画で生きている姿について知らず知らず考え
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