u気にすることはありませんよ」
と云った。
「俳優にどんなファンがいたって、ある意味じゃ不可抗力なんだから」
一日おいた冬の晴れた朝、吉之助は予定どおりモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]を出るシベリア鉄道へのりこんだ。
五
伸子と素子とは、また貸間さがしをはじめた。もう十二月で、伸子たちにとってまる一年のモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]生活だった。春ごろ、貸部屋をさがしたときのようなまだるっこいことはしないで、こんどはいきなりモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]夕刊の広告受付の窓口で求間の広告をかいた。
あしたにも雪が降りはじめそうな夕方だった。午後三時ごろから店々に灯がついているトゥウェルスカヤ通りをホテルへ帰りながら、伸子は、
「こんどもいい室が見つかるといいけれど」
と云った。
「でも、ルイバコフのところみたいに、あんまり短い期限は不便ね」
レーニングラードへ出発するまでの暫くの間暮したフラム・フリスタ・スパシーチェリヤの金の円屋根が窓からみえる家は、ルイバコフの家族が夏の休暇をとるまでという期限つきだった。
「あのときは
前へ
次へ
全1745ページ中538ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング