{語で吉之助にきいた。
「ええ荷づくりが少しあったもんですから、……失礼しました」
二人の娘をあずけたことをもこめて、吉之助は伸子たちにも軽く頭を下げた。先にかえった左団次一行からはたよりがあったか、とか、正月興行で、吉之助の配役は何かというような話が出た。
テルノフスカヤがどういう用で吉之助のところへ来たのか、伸子たちに見当がつかないように、吉之助にもわからないらしかった。吉之助の室へ行こうとするでもなくて、四十分も雑談すると彼女は来たときのように余情をのこさない足どりで伸子たちの室から出て行った。
伸子たちがモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]へ来てやがて一年になろうとしていた。その間、ただ一度も来たことのないテルノフスカヤが、その晩不意に、しかもさがしもしないような的確さでパッサージの三階にいる伸子たちの室を訪ねて来たのは不思議な気持だった。
「長原吉之助のファンは、ああいうところまではいってるのかな」
そういう素子に吉之助は却って訊ねるような視線を向けた。
「一度楽屋で見かけた方には相違ないんですが……」
素子は何か考えるようにパイプをかんでいたが、やがて、
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