Aクリーム色のスタンドの灯かげといっしょに伸子の気分まで動揺させた、あの、吉之助、なかなかいいね、と云った素子の三十をいくつか越した女の体がそのせつなふっと浮き上ったような切ないニュアンスは消されていた。
あさってはいよいよ吉之助もモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]を立つという晩だった。十二月の十日すぎで街は一面寒い月夜だった。八時すぎに、思いがけず若い女を二人つれた吉之助が伸子たちの部屋を訪ねて来た。
「お邪魔してすまないと思ったんですが、わたしにロシア語ができないんで、どうも……」
吉之助は当惑そうに云って、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の若い女にあんまり見かけない捲毛を器量のいい顔のまわりに垂れた姉妹を、伸子たちに紹介した。
「こちらは姉さんなんだそうです、浪子さん」
その娘は、紫っぽい絹服をつけていて、内気そうに伸子たちと挨拶した。
「こちらが妹さん、さくらさんていうんだそうです。――姉妹で度々楽屋へ訪ねて頂いたんですが……」
妹も新しくないベージュの絹服をきていて、器量は美しいけれども艷のない若い顔に白粉がついていた。胸のひろくあいた古い絹服、
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