ニも思えない。伸子は俳優としてのガーリンの一生を、平坦な発展の道の上に予想できなかった。
「それもそうだけれど、吉之助さん、どう思う? わたし、さっきガーリンと話していてふっと思ったのよ。こんど歌舞伎が来て、一番熱心に見学したり、特別講習をうけたりしたのはメイエルホリドだったでしょう。次は『トゥランドット』をやっているワフタンゴフ。ム・ハ・ト(芸術座)はその割でなかったでしょう? あれは、どういうことなんだろうと思ったの」
「ム・ハ・トには演技の伝統が確立しているからなんじゃないですか」
「そりゃそうだよ、ぶこちゃん」
「わたし、それだけだとは思わないなあ」
 伸子は、真面目な眼つきで吉之助を見た。
「ム・ハ・トは、リアリズムで押しているのよ、そうでしょう?『桜の園』から『装甲列車』へと移って来ているけれども、それはリアリズムそのものを押して発展させて動いて来ているんです。メイエルホリドはあんな風に様式化して、動的にやろうとしているけれど、ああいう線が本質的にどこまでも発展できるのかしら……。わたし、ム・ハ・トが、歌舞伎の隈《くま》に大して関心を示さなかったのに、メイエルホリドが熱心だ
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