奄オながら、長原吉之助と数人の若手俳優たちは、舞台におとらぬ熱心さでベルリン行の手順をすすめていた。歌舞伎の一行には、興行会社である松竹の専務級の人もついて来ていた。ベルリンへ行きたい俳優たちはその計画を左団次に承知してもらうばかりでなく、会社の人たちの承諾も得なければならず、それには、正月興行に必ず間に合うように帰ることを条件として申出ることそのほか、伸子たちには想像できないこまかい順序といきさつがあるらしかった。そして、そういう順序のはこびかたそのものに、また歌舞伎の世界のしきたりがあるらしくて、率直な吉之助でさえも、伸子たちが、そのことについてせっかちに、
「どうです、うまく行きそうですか」
ときくと、
「ええ、まあ」
と笑いまぎらすことが多かった。
「左団次さんは自分も若いときイギリスへ行ったりなんかしているから、自然話もわかるんですがねえ」
それでも吉之助たちのベルリン行の計画は歌舞伎がモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]での公演を終る前後には実現の可能が見えて来た。
「見てきます」
吉之助は俳優らしさと学生らしさのまじりあったような若い顔を紅潮させた。
「そして
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