ツよくするんです」
「そうだわ、わたしが鷺娘の幽艷さを説明しようとして、妙な気もちがしたのもそういうとこだわ」
伸子が賛成した。
「どんなに力こぶを入れて見たって、鷺娘には昔の日本のシムボリズムとファンタジーがあるきりなんですもの……しかもああいう踊りの幻想は、古風なつらあかり[#「つらあかり」に傍点]の灯の下でだけ生きていたんだわ」
「――桑原、桑原」
中館公一郎がふざけて濃い眉をつりあげながら首をちぢめた。
「吉ちゃんの云っているようなことが御大《おんたい》にきこえたら、とんだおしかりもんだろう」
だまって笑っている吉之助に向って素子が、
「あんたがた、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]へ来る前に一場の訓辞をうけたって、ほんとですか」
ときいた。
「左団次が一同をあつめて、ロシアへは芝居をしに行くんだっていうことを忘れるな、赤くなることは禁物だって云ったって――」
吉之助はあっさり、
「そんなこと云わせるものもあるんですね」
と答えた。
「こんどこっちへ来るについてだって、それだけの人間をひっこぬかれるんならいくらいくらよこせって、会社側じゃ大分ごてたんだっていう
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