トもしがみついているその場所からはがれないと感じた、あの異様な夏の夕暮の実感に通じるものでもあった。
 伸子は素子と自分との間に生れた新しいこころもちの距離を発見した。保の死から伸子のうけた衝撃の大きいのを見て、ヴォルガ下りの遊覧やドン・バスの炭坑でシキ[#「シキ」に傍点]へ入るような見学を計画したのは素子であった。それはみんな伸子を生活の興味へひき戻そうとする素子の心づかいだった。そうして生活へ戻ったとき、伸子はソヴェト社会と自分との関係が、心の中でこれまでとちがったものになったのを自覚した。素子は、もとのままの位置づけでのこった。この間までの伸子がそうであったように、素子は自分をソヴェト社会の時々刻々の生活に絡めあわせながらも、一定の距離をおいていて、必要な場合にはどちらも傷つかずにはなれられる関係のままにのこっていた。
 自分と素子とのこのちがいは切実に伸子にわかった。そして、伸子はその変化を議論の余地ない事実として素直にうけいれた。弟の保に死なれたのは素子ではなくて伸子であった。その衝撃が深く大きくて、そのためにこれまでの自分の半生がぽっきり折り落されたと感じているのは、伸子で
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