ワでのきずなの一切からはたき出されたと自分で感じた。はたきだされた伸子は、小さい堅いくさびがとび出した勢で壁につきささりでもするようにいや応ない力で自分という存在をソヴェト社会へうちつけられ、そこにつきささったと感じるのだった。
こんな伸子の生活感情の変化はそとめにはどこにもわからなかったが外界に対して伸子を内気にした。ソヴェト社会につきささった自分という感じは、しきりにモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]へ来る歌舞伎の噂でもちきっている人々の感情とは、どこかでひどくちがったものだった。伸子はそのちがいを自分一人のものとしてつよく感じた。保の死んだ知らせが来たとき、伸子は失神しかけながらしつこく、よくて? わたしは帰ったりしないことよ、よくて? とくりかえした。ソヴェト社会につきささった自分という感じは、この、よくて? 帰ったりはしないことよ、と云った瞬間の伸子の心に通じるものであった。同時に、パンシオン・ソモロフの古びた露台の手摺へふさって、すべての過去が自分の体ぐるみ、うしろへうしろへと遠のいてゆくようなせつな、絶壁にとりついてのこっている顔の前面だけは、どんなことがあっ
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