艪ワず鳴っていたガルモーシュカの蛇腹《じゃばら》はたたまれて肩からつるされ、パンシオン・ソモロフの前の通りを停車場へ向って行った。一つの列が通っているとき、それに遮られてパンシオン・ソモロフの女中のダーシャが、腕に籠をひっかけて向い側の歩道に佇んでいるのがヴェランダから見えた。いつも葡萄酒色のさめた大前掛をスカートいっぱいに巻きつけて働いてばかりいるダーシャを、外光の中で見るのは珍しかった。ダーシャも、列に道をさえぎられた一二分にむしろ休息を見出しているように立って眺めている。このダーシャは、伸子が保の死んだしらせをうけとって、まだ自分の部屋で食事をしていたころ、朝食をのせて運んで来た盆をテーブルの上へおろすと、改めてエプロンで拭いた手を、ベッドにおき上っていた伸子にさし出した。そして、
「おくやみを申します」
と言った。
「弟さんが死なれましたそうで――おおかた学生さんだったんでしょうね」
もう四十をいくつか越しているらしいダーシャは重いため息をした。
「もとは、こっちでもちょくちょくそういうことがあったものです。神よ、彼の平安とともにあれ」
ダーシャは祈祷の文句をとなえて胸の上
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