T点]をとらえられない自分を感じたことであろう。動坂の人々の生活の気風は、一定の経済的安定の上に流れ漂って、泰造にしろ、或る朝新聞をひろげてその報道に三・一五事件をよむと、そのときの短兵急な反応でその記事に赤インクのかぎをかけ、伸子へ送らせたりするけれども、つまりはそれなりで日が過ぎて行った。
八ガツ一ヒタモツドゾウチカシツニテシスという電文をよんで気を失いかけながら、伸子がくりかえして、よくって? わたしは帰ったりしないことよ。よくって? とうわごとのように念を押した。それは伸子が自覚しているよりも深い本心の溢れだった。伸子という姉のいるせいで、保が一層保らしく生きそして死んだとしても、伸子は、その生と死においてやっぱり密着しつづけている彼と自分とを感じた。その保の死を負った伸子の生の感覚は動坂の誰にもわからないものであることを伸子は感じ、伸子に、いま在る自分の生の位置からずることをがえんじさせないのだった。
その日曜日も、午後おそくなるとデーツコエ・セローの森じゅうにちらばっていた見学団が、再びそれぞれの列にまとめられた。誰も彼も朝来たときよりは日にやけ、着くずれ、一日じゅうた
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