@こういう話しぶりの間に、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]では伸子がめぐり合うことのなかったゆるやかさでスモーリヌィでの時が経過した。迅すぎない時間の流れのなかに、伸子は変化しつつあるソヴェトの人々の感情の、横姿やうしろ姿までを見まもるゆとりを与えられた。
はじめて、スモーリヌィの婦人部へ行ったときのことだった。
二台のタイプライターの音が交互にきこえて来る隣りの室のドアがあいて、一人の瘠せがたの白ブラウスをつけた婦人が出て来た。黒いスカートをはいて背のすらりとしたそのひとの皮膚はうすくて、ヴ・オ・ク・スで会った若い女のひとと一種共通したレーニングラードの知識婦人の雰囲気をもっていた。
そのひとは、伸子たちの問いに答えて婦人部の活動を話してきかせるより先に、伸子たちが共産党とどういう関係をもっているかときいた。伸子たちとして、行った先でそういう質問をうけたのははじめてだった。
「わたしたちは党外のものです」
伸子が返事した。
「政治活動家でもありません。わたしたちは文学の仕事をしているから――けれども、わたしたちはあなたがたの仕事について知りたいと思って居ります」
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