フ時分すべての報告演説の中に使われる表現の一つであった。
「彼女は、ソヴェト文化部へ質問して来ているんです。ソヴェト権力は、亭主が妻をなぐることを認めているでしょうか。わたしの亭主は革命前に、わたしをなぐっていました。そしていまもなぐります。――ヴォート!」
 パシュキンは、さきの太い鉛筆の大きな字のかいてある水色の紙きれをテーブルの上において、大きい手の平を上向けに、また、
「ヴォート!」
と、云って左眼をつぶった。
「ソヴェト権力がどんなに広汎な問題に責任を問われているかということが、わかりますか」
 やがてパシュキンは、ユーモラスな眼の輝きのなかに集注した注意を浮べた。
「彼女は、坊主にこれを訴えないで、ソヴェト文化部へ手紙をよこした。ここにはっきり我らの十年の意味が語られています」
「返事をやりますか?」
 伸子がそうきいた。
「もちろんやりますとも。――この手紙は我々のところから婦人部へまわします。残念なことにロシアにはまだ、なぐる夫や親たちが少なからずいるんです。子供たちも加わって、なぐられる習慣のある子供たちを保護する団体をつくりました。誰からそのことをききましたか?」

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