、と、日本の男の古来の性的|放恣《ほうし》に目新しい薬味をつけ、そういう空想にひかれて崩れかかる若い女たちの危さを面白がるような気分を、伸子はよみとったのであった。もし、もっともっと社会的に保証された男と女とその子供たちとが、たのしく安全に生きて、社会に価値のある創造をしてゆくよりどころとしての家庭を確立させなくていいのなら、コロンタイがいうように結婚や家庭や子供がけちらされてしまっていいものなら、社会主義なんかいりはしない。伸子は激情を動かされて素子を対手に議論した。
「生産手段と政権をプロレタリアートがとれば社会主義だなんかと思っているんなら、それこそバチが当る、……人間は、それだけのためにこんな苦労をしてやしないわよ、ねえ。人間の心も体も、個人と社会とひっくるめて、ましに生きようと思うからこそ、骨を折っているのに……」
 伸子は二木準作をしんからいやに感じる心の一方で思うのだった。ソヴェトにある数千の托児所や子供の家、産院は何を意味して居るだろうか、と。数百の食堂は不十分ではあっても働く女の二十四時間にとって何を語っているだろう。結婚の社会的な責任が無視されているならば、無責任な
前へ 次へ
全1745ページ中339ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング