轤フ中から、黒い瞳で当惑したように伸子を見つめた。
「きいて下さい、|お嬢さん《バリシュニヤー》、わたし洗濯ものを干さなけりゃならないんです。|奥さん《ハジヤイカ》が帰るまでに干しておかなけりゃならないんです。そう云って出て行ったんです」
洗濯ものを干すことで、どうしてニューラがそんなにまごつかなければならないのか伸子にわからなかった。
「ニューラ、あなたいつも自分で干してるんでしょう? それとも奥さんがほしているの?」
「わたしが干しているんです。――でも、わたし、こわいんです」
わたし、こわいんですと云いながら、ニューラはショールの下で本当にそこにこわいものが見えているように見開いた眼をした。
黒海沿岸のどこかの小さい町で生れた十七歳のニューラは、ほとんど教育をうけていなかった。ソヴェトの娘としての心持にもめざまされていなかった。伸子たちが、ヨシミとサッサという二人の名を教えても、ニューラはその方がよびいいように昔風に二人を|お嬢さん《バリシュニヤー》とよんだ。ルイバコフを主人《ハジヤイン》、細君を|奥さん《ハジヤイカ》とよんでいる。モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82
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