nで、伸子たちをバリシュニヤーとよぶのは辻馬車の御者か町の立売りぎりだった。パン屋の店員でも女市民《グラジュダンカ》とよんでいるのに、ルイバコフ夫婦が夏の休暇に南方へでも出かけたとき見つけて連れて来たらしいニューラの、雇女としての境遇は古くさくて淋しかった。
 こわいというニューラの言葉から伸子は、この間この建物の別の棟に泥棒がはいったという噂があったのを思いだした。
「ニューラ、その洗濯ものはどこへ干すの」
「物干場です」
「それはどこ?」
「上なんです。一番てっぺんなんです」
 やっと伸子にわかりかけて来た。物干場は五階のてっぺんだった。もう夜だのにニューラはそこへ一人で物を干しにゆくのがこわい、というわけなのだった。
「わかったわ、ニューラ、じゃ、わたしが一緒に行ったげる」
「ありがとう、|お嬢さん《バリシュニヤー》。あなたは御親切です」
「外套をきて来るからね」
「わたし待ちます」
 伸子は室へ戻り、外套を出しながら、
「一寸ニューラが洗濯もの干すのについて行ってやることよ」
と素子に告げた。
「てっぺんで、一人でそこまで行くのがこわいんだって」
「――ぶこだって大丈夫なのかい
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