Aって行く自分を思っているにちがいなかった。伸子はそう思ってゴーリキイの年をとり、嘘のない彼の眼を写真の上に見るのだった。
その晩、九時すぎてから伸子が廊下へ出たら、伸子たちの室と台所との間の廊下で、ニューラが妙に半端なかっこうでいるのが目についた。伸子は、自分の行こうとしているところへ、ニューラも行きたかったのかと思って、
「行くの?」
手洗所のドアをさした。どこからか帰ったばかりのように毛糸のショールを頭にかぶっているニューラは、あわてて、
「いいえ。いいえ」
と首をふり、台所へ消えた。
伸子が出て来たとき、台所のところからまたニューラの頭がちょいとのぞいた。どうしたのかしらと思いながら、伸子がそのまま室へ入ろうとするとうしろから、
「|お嬢さん《バリシュニヤー》!」
すがるようなニューラのよび声がした。伸子は少しおどろきながら台所の前まで戻って行った。
「どうしたの? ニューラ」
「邪魔して御免なさい」
「かまわないわ。――でも、どうかしたの? 気分がわるいの?」
「いいえ。いいえ」
ニューラはまたあわてたように首を左右にふりながら、浅黒い、鼻すじの高い半分ギリシア人の
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