oした。
「あなたもその辺まで御一緒に、いかがです?」
 素子独特の淡白さで、着がえのために宮野に室から出て貰った。衣裳ダンスの前で上衣を出しかけている素子の耳へ口をよせて伸子が心配そうにささやいた。
「行くところ、わかってる?」
 素子はニヤリとした。そしてテーブルのところへ行って引出しから財布を出しながら、そばへよって行った伸子にだけきこえる声で、
「ついて来りゃいいのさ」
と云った。
 外へ出ると、春のはじめの快晴の日曜日らしさが町にも並木道の上にもあふれていた。ふだんよりゆっくり歩いている通行人たちはまだ防寒外套こそ着ているけれども、膝頭まであるワーレンキがたいてい軽いゴムのオヴァ・シューズだった。車道との間にはとけたきたない雪だまりと雪どけ水の小川が出来ているが、きょうは歩道の真中が乾いて石があらわれている。伸子たちにとっては、春がきたモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の歩道をじかに踏む第一日だった。
「――乾きはじめたわねえ」
 伸子は天気のよさをよろこびながら、こんな事情で出て来たことを辛がっている声でつぶやいた。
 素子は三人のすこし先に立つようにアストージェ
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