Gフ・ルイバコフという男からだった。
「変だな、ただアストージェンカきりで、町とも何ともないんだね、どの辺なんだろう」
 その手紙は、ぞんざいに切った黄色い紙片に、字の上をこすったり濡《ぬら》したりすると紫インクで書いたように色が浮きでて消えない化学鉛筆で書いてあった。簡単に、われわれのところに、あなたがたの希望条件に叶《かな》った一室がある、お見せすることが出来る、という男文字の文面だった。ひろげたその手紙とひき合わすように、テーブルの上にかがみかかってモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]市街地図をしらべていた素子が、
「へえ。――こんなところに、こんな名がついているんだね。ぶこちゃん! 場所はいかにも、もって来いだよ」
 地図をみると伸子たちがいるホテル・パッサージから狩人広場へ出て、ずっと右へ行き、クレムリンの外廓を通りすぎたところにデルタのようにつき出た小区画があって、そこがアストージェンカだった。
「一番地て云えば、とっつきなんだろうな」
 地図に見えている様子だと、そこはモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]河にも近いらしいし、並木道《ブリ※[#濁点付き片仮名
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