ニがあるというだけで、作家として是非会いたい人でもなかった。
「吉見さんは行かれるつもりらしいですよ、あなたが外出して居られたから、はっきりした返事はきけなかったですが――つまりあなたがどうされるか、はね」
「すみませんが、じゃ、一寸いっしょに戻って下さる?」
「いいですとも!」
 伸子は、室へ入ると買いものの網袋をテーブルの上へおいたまま、外套をぬぎながら、素子に、
「ポリニャークのところへ行くんだって?」
ときいた。
「ぶこちゃんはどうする?」
 こういうときいつも伸子は、行きましょう、行きましょうよと、とび立つ返事をすることが、すくなかった。
「わたしは、消極的よ」
 すると内海が、そのパラリと離れてついている眉をよせるようにして、
「それじゃ困るんです。今夜は是非来て下さい」
 たのむように云った。
「どうも工合がわるいんだ――下へ、アレクサンドロフが来て待ってるんですよ」
「そのことで?」
 びっくりして伸子がきいた。
「そうなんです。秋山氏があんまり要領得ないもんだから、先生到頭しびれをきらしてアレクサンドロフをよこしたんでしょう」
 アレクサンドロフも作家で、いつかの日本
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