ゥないで、伸子はつづけた。
「保さんのこしらえて頂いた温室というのがいくらかかったかは知らないけれども、それは少くとも、貧しい高校生の一年分の月謝よりどっさり費用がかかっているでしょう。保さんはそのことを考えてみたでしょうか。そして、公平に云えば、それだけの金がないばかりに、保さんよりもっと才能もあり人類に役に立つ青年が泥まびれで働いているかもしれないということを考えてみたでしょうか。こういういろんなことを、保さんは考えてみて? 想像の力のない人間は、思いやりも同情もまして人間に対する愛などもてようもありません」
保に向ってかいているうちに、みんなが旺《さかん》な食慾を発揮しながら、あてどなく時間と生活力を濫費している動坂の家の暮し全体が伸子にしんからいやに思われて来た。
「保さん、あなたこそ青春の誇りをもたなければいけないわ。自分のもてるよろこびをたっぷり味うと一緒に、それが、この社会でどういう意味をもっているかということは、はっきり知っているべきです。いただくものは、無条件に頂くなんて卑屈よ。持つべきものは、主張しても持たなければならないし、持つべきでないものは、下すったって、頂
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