をもってあらわれている。
リン博士は、孫逸仙大学の教授かもしれない。ほとんどそれは間違なく思えた。けれども、自分が政治的な立場を明かにもっていないのに、あいてにばかりそんなことについて質問するのは無礼だと思えた。伸子は、
「ミスタ・クラウデは、あなたに私を、どう紹介して下すっているのでしょう」
かいつまんで、自分のことを話した。モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]へ来て、ほんの少ししか経っていないこと。モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]へは、観て、そして学ぶために来ていること、など。――
「あなたの計画はわるくありませんね。だれでも、一番事実からつよい影響をうけますからね」
リン博士はニューヨークにある大学の政治科を卒業して、そこの学位をもっているということだった。伸子の記憶に、まざまざと、その大学のまわりで過した一年ほどの月日の様々な場面が甦った。大図書館の大きな半円形のデスクに、夜になると、緑色シェードの読書用スタンドが数百もついていた光景。楡の木影がちらつく芝生に遊んでいた栗鼠《りす》。アムステルダム通りとよばれている寄宿舎前の古いごろごろした石敷の坂道を
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