かにうけとって、リン博士も年長の婦人らしく、笑みをふくんだ視線で伸子を見ながら、
「さて――私たちは何からお話ししたらいいでしょうね」
と云った。明晰で、同時に対手に安心を与える声だった。伸子はこのひとが若いものを扱いなれていることを直感した。モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]の孫逸仙大学にはどっさり中国から女学生が来ていた。黒いこわい髪を首の短い肩までバサッと長いめの断髪に垂して、鳥打帽をかぶっている中国の女学生たちを、伸子もよく往来で見かけた。中国では革命家たちに対して残酷で血なまぐさい復讐が加えられていたから、モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]へ来て勉強している娘たちの顴骨のたかい浅黒い顔の上にも、若い一本気な表情に加えてどこやら独特の緊張があった。中国女学生たちのそういう表情のつよい顔々は、並木道に立って色糸でかがった毬を売っている纏足の中国の女たちの顔つきと全くちがっていたし、半地下室に店をもっている洗濯屋のおかみさんである中国の女たちともまるでちがった、新しい中国の顔であった。リン博士は、それらの中国のどの顔々ともちがう落つきと、深みと、いくらかの寂しみ
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