のひとを案内して戻って来た。襟に狼の毛のついた外套をぬぎ、頭をつつんでいた柔かい黒毛糸のショールをとると、カラーのつまった服をつけた四十近い婦人が現れた。男も女も頬っぺたが赧くて角ばった体つきのひとが多いこのモスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]で、その中国婦人の沈んだクリーム色の肌や、しっとりと撫でつけられた黒い髪は伸子の目に安らかさを与えた。
 時間を気にしているクラウデは、あわただしくその中国婦人と伸子とをひきあわせた。
「リン博士です。このかたの旦那様、やっぱり法学博士で、いまはお国へかえっておられます」
 リンという婦人に、クラウデはロシア語で紹介した。
「お話しした佐々伸子さん。日本の進歩的な婦人作家です」
 そして、リン博士と伸子とが握手している間に、
「では、どうぞごゆっくり」
と、クラウデは、外套を着て室から出て行った。
 やっと、きょうここへ来た目的がはっきりして、同じ薄暗く、ごたついた室にいても伸子は気が楽になった。伸子は、ほぐれくつろいでゆく心持から自然に、にっこりして、リン博士を見た。
「…………」
 伸子の人なつこいその気分を、聰明らしい落付いた眼のな
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