「と伸子とは、それから、三四軒、骨董商を見て歩いた。クラシックな趣味の建築家である泰造はルネッサンス前後の家具と陶器に着目した。この日の巡遊記念に、日本の柿右衛門をロココ風に模倣したセーブルの小さな白粉入れを伸子は泰造からもらった。
帰りに、泰造は伸子をつれてフリードランド・アヴェニューにあるホテル・キャンベルへよった。往きのタクシーの中での提案が早速実行にうつされたわけだった。泰造の知人がここに滞在していて、ほめていたということで、どこからどこまでこぢんまりと、行儀よく清楚な雰囲気のホテルであった。
「ホテルとしてはたしかにいいけれど。――でも、お母様にはどうかしら」
荷物がごたついたなかに、つや子の寝台まで夫婦の寝室においているアンテルナシオナールの室の光景を伸子は思いくらべた。
「お母様には、こんなところ、きゅうくつ[#「きゅうくつ」に傍点]じゃないかしら。ちんまりしすぎていて……」
多計代は、外国へ来ても、それが無作法でないかぎり、日本人の習慣で生活してわるい法はないと信じていて、そのとおり実行した。十三にもなった娘の寝台を、親たちの寝室のなかへおかせていることが、ホテルの召使いたちの目にどんな風に映るかなどということは問題にしなかった。伸子がそれとなく注意したとき、多計代は、
「伸ちゃんは、つや子がどんなに神経質だか知っているのかい?」
気色を害された顔で云った。
「お前ってひとは、何でもそうだ」
つや子を多計代からはなそうとするのを、防衛しようとでもするような眼づかいだった。
しっとりと物しずかなホテル・キャンベルの雰囲気と、多計代が身のまわりにもっている大がかりな空気とは、どこかそぐわないものであることを、泰造も直感したらしく、
「お前のおっかさんは、何しろひろい室でなくちゃ気に入らない人なんだから」
と云った。
アンテルナシオナールを引きはらうという計画は、多計代をよろこばせた。その話をきいて、小枝は、
「まあ! ほんと?」
輝く眼を見はって和一郎と顔を見合わせた。
「だから、和一郎さんも、その気になってうちさがしを手つだってくれなくちゃ駄目よ、ね」
単純に明るくそういう伸子に、
「うん」
和一郎は重く考えながら答えた。
「僕たちが、のりきになるのもよしあしなんだ。早く別になろうとして、珍しく御熱心だねなんてやられちゃ、やりきれな
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