sオニェールはすぐ元気をとり戻した陽気さにかえって、
「でも、僕はあてましたよ、御覧なさい。これは金属でつくられてる!」
 モスク※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]製のペン先を二本つまんで見せた。
「――さてと……これには何が入っているかな」
 デスクの上におかれている素子の書類入鞄に手をかけようとした。
「さわっちゃいけない」
 きつい声で云って、素子はその鞄をかけている椅子の背と自分の体との間にしっかりはさみこんだ。
「なぜ、それにさわっちゃいけないんですか?」
「お前さんの指導者にきいてごらん」
 伸子は、ピオニェールのあてっこ遊びに飽きて来た。茶をのまして早く帰そうと思い、水色エナメルの丸く胴のふくらんだヤカンをさげて、台所まで湯をとりにおりた。
 湯の入ったヤカンをさげ、ピオニェールのためにコップとサジとをのせた盆をもって部屋へもどって来ると、ピオニェールは、せまいその部屋の真中あたりにじっと椅子にかけている素子のまわりを、ぐるぐるまわって歩きながら、伸子の茶色い小さなハンド・バッグをあけてなかをのぞき、
「やあ、あなたのまけだ!」
と叫んでいるところだった。
「七ルーブリ、三十五カペイキと、金の時計と、古い芝居の切符とが入ってますよ」
 伸子は、変なことをすると思った。
「なにしてるの? なぜわたしのスーモチカ(金入れ)に用があるの」
「あなたのタワーリシチが、この中に入ってるものをあてる番だったんです。三ルーブリぐらい金があるだろうというきりで、あと何が入っているか、全然しらなかったんです。僕が勝ったんだから、これは僕が没収(リクイジーロワーチ)します」
 ピオニェールは、その茶色の小型ハンド・バッグを、もったまま、手をうしろへまわした。伸子は、少年の前へずっとよって行って手をさし出した。
「よこしなさい!(ダワイ)」
「…………」
「どうして? よこしなさい! 遊びは遊びよ!」
 戻してよこしたハンド・バッグを伸子は、机にしまい、音をたてて引出しをしめた。
「さあ、もう十分だ。お茶をのんで、帰るんです」
 茶をのみながら伸子はそろそろ自分のかえる時間も気になりはじめた。
「何時ごろかしら」
 素子が腕時計を見た。
「おや、もうこんなかい」
 間もなく十二時になろうとしているところだった。

 伸子はピオニェールのなりをした少年とつれ立ってパッサー
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