ュめながら歩いてゆくブルヴァールには、晩秋という季節のしずけさばかりでない沈静がただよっていた。歩道の人通りもぐっとへってはいるが、それより、伸子をおどろかしたのはブルヴァールに向っている有名なカフェーのテラスが、ほとんどがらあきなことだった。いつも空席が見つけにくいほど立てこんでいて、腕にナプキンをかけたギャルソンが軽快に陽気にその間をとびまわっていたオペラの角のカフェー・ド・ラ・ペイにしろ、ずっとはなれてエトワールに近いクポールにしろ、往来を眺めて椅子にかけているような人は、ほんの数えるしかなかった。その人たちのなりは、黒っぽく、大半が壮年を越した年輩の人だった。ブルヴァールせましと歩いていたあの薄色の派手なスーツの若い連中、享楽こそモラルだというような眼つきをしてソフトを斜めにかぶって歩いていた連中は、みんなどこかへ行ってしまった。
「パリがパリの人たちのところへ還って来たのね」
「しかし、こんな風じゃ、やっぱり困るんだろうな。何て云ったってフランスは遊覧客のおとす金とアメリカが買う贅沢品で、バランスをとって来ているんだから」
 リボリやブルヴァールの高級装身具店は、恐慌などに浮足たたない誇りをもって豪奢な店飾りをしている。
 ブルヴァールを中心として、伸子はあの通りからこの街すじへと、思いつくままに曲ったり、つっきったりして歩いてゆく。蜂谷良作は、あきる様子もなくそれにつきあっているのだったが、
「佐々さんと歩くのは、おもしろいね」
と云った。
「出たらめみたいなくせに、こうしてみると、一種のかん[#「かん」に傍点]で歩いている」
「――わたしが読めないからだわ。眼と足とで見るしかないからよ」
「そうばかりじゃないな。――部屋をみて歩いていたときね、あのとき僕は気がついたんだ」
 伸子は、ぼんやり、
「そうお」
と答えた。クラマールへ引越してゆくことがきまる前、伸子の部屋さがしを蜂谷がたすけた。二人づれで歩いて、いくところ見ても、伸子の住めるような場所が見つからなかったとき、伸子は、蜂谷をいつまでもきりのない仕事にひっぱっておいてはわるいと思って彼のたすけをことわろうとしたことがあった。そのとき、蜂谷良作は伸子のことわろうとしている意味をさぐるように伸子をみて、ゆっくりと、
「僕は、あなたのように事務一点ばりには考えていないんだがな」
と云った。蜂谷のその言
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