qのために、多計代はバザーの特別な援助をすることもなく、クリスマスのおくりものをすることも考えなかった。伸子の女学生時代に多計代がそうであったとおりだった。
「お母さまだって、あなたをまたあすこへかえそうと云っていらっしゃりゃ、しないでしょう」
「――もしお母さまが相談したら、お姉さま、どこか別のところを考えてよ、ね?」
「わたしは、はじめっから尼さん学校は賛成じゃなかったんだもの」
「あんなところへまた行くんなら、このひと、不良少女になっちゃう」
 不良少女というものを、つや子は晩熟な女の子らしく、わるい女の子というほどの内容で云っているのだったが、それをいうとき、つや子の、がっしりと四角い顎をもっているきつい顔の上に、旅券《パスポート》に貼ってある小型写真にうつっているような、けわしく、暗い、一途な表情があらわれた。
 休日らしい暮しがつづいたのは、二日か三日のことであった。
 マダム・ラゴンデールの授業をうけにホテルへ戻っていた伸子がかえって来ると、ひとりで留守をしていたつや子が、
「こまっちゃった!」
 伸子の前へ来て立った。
「どうしたの」
「マダム・ルセールったら、洗濯にやってくれって、はっきり云ってたのんでたのに、メルシ、メルシってこのひとのスリップをもって帰っちゃった」
「どんなスリップ?」
「いちばん御秘蔵の」
 うすいピンクのクレープに、幅のひろいきれいなレースつきというものだった。
「このひと、ちゃんと字引きひいて、云ったのに――」
 つや子は、文法ばかりやかましくしつけられた尼僧女学校のフランス語で、洗濯《ラヴェ》という言葉や、やる《ドネ》という単語を四角四面にならべて、すばしっこいマダム・ルセールに、かえって、やる《ドネ》というひとことを、都合いいように解釈されてしまったらしかった。
「自分で行かなかったばち[#「ばち」に傍点]よ。――わたし流に、どうぞ《シルブプレ》、洗濯屋《ア・ブランシセリ》へ、ってでも云えばよかったかもしれない」
 マダム・ルセールが特別ずるい女というのではなかった。何かよぶんな用事を云いつけたとき、多計代が心づけをわたしたりすると、彼女は、いかにも感謝にたえないように片膝をかがめて礼をのべた。マダム・ルセールのそういうとりなしは、言葉の通じない多計代の気分をとらえるのだった。
 生活によって鋭くされているフランスの女
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