フ眼はしに、つや子は鈍重な少女のようにうつっているでもあろう。その娘と二人きりしかいない、しんとした午後、マダム・ルセールが、わたされたピンクのスリップをふし高な両手の間にたくしこむようにしながら、メルシ、メルシ一点ばりにひき下って行った情景を想像すると、伸子はおこる気もちもしなかった。
「マダム・ルセールも、きっとそのスリップが気にいったんでしょう。『むくつけき小羊』にはもったいないと思ったのかもしれない」
悄気《しょげ》ていたつや子が笑いだした。「むくつけき小羊」というのは、和一郎が小枝の気をそこなうようなことをしたとき、小枝の前で自分をせめ、へりくだる言葉として使ったのがはじまりで、家族の若いものたちの間にはやっているのだった。
親たちが留守になっても、マダム・ルセールは通って来て、伸子とつや子のために食事の仕度をしているのだったが、伸子は、いつとはなしに、献立がかわって来ているのに心づいた。おいしい小粒青豆《プティ・ポア》がひっこんで、ふと気がついたとき皿に出ているのは、ありふれた|さや豆《アリコベール》だった。前菜からサーディンやソーセージという類のものが消えた。伸子は、僅かの間のことはそれでもいいという気だった。その分だけをマダム・ルセールとその家族が食べているなら、結局無駄ではないのだから。マダム・ルセールが通って来て働くようになってから、泰造は一日およそいくらと見つもって、三日分ほどずつまとまった金を、マダム・ルセールに自分でわたしていた。そして、精算書を出させていた。マダム・ルセールの計算書は、肉類いくら、野菜いくら、という風に金額でかかれていて、何の肉をどれだけという分量は記入されなかった。自分たち夫婦が一週間の予定でジェネ※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]旅行に出発するとき、留守の台所の入費を、泰造は、いつもどおりまとめてマダム・ルセールに手渡して行ったのだった。
マダム・ルセールが用意しておいた料理を運んで、姉妹が夕飯のテーブルについたある晩のことだった。つや子が、フォークを手にとったまま、じっとテーブルの上にのっている大皿に目をこらして、いつまでも自分の皿へとりわけようとしない。
「どうしたの? 何かへん?」
姉としていくらか責任のあるこころもちになって、伸子は大皿をひきよせて調べるようにそこに盛られている料理を見た。茶色のこっ
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