傍に出て、ごちゃごちゃになって居ます。
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と云う。
私はハット思った。
さてこそ、到頭入ったな?
頬かぶりで、出刃を手拭いで包んだ男が、頭の中を忍び足で通り過ぎた。
私は大いそぎで、まだカーテンが閉って居る寝室の戸を、ガタガタ叩きながら、
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「お母様! お母様! 早くお起なすって頂戴。
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と云うと、もうさっきから起きて居たらしい母の顔が、すぐ出て来た。
私は自分でも気の付いたほど、喫驚《びっくり》し、へどもどした顔をして、用箪笥の一件を報告した。
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「そいじゃすぐ交番へお出って。それから、皆なそのまんまにして置かなくっちゃいけないよ、すぐ行くから。
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その中に弟達が皆起き出して、面白半分に、
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「泥棒が入ったんだって? どっから入ったの? 誰か見つけた?
「何故僕起さなかったんだい。泥助の奴なんかすっとばしてやるのになあ。
「いつ入ったの? 僕の本持ってっちゃわないだろうか。
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などと口々に騒ぎ立てるので、家中はす
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