、私はすっかり神経質になり、強さが引っこみかかった様な様子になって仕舞ったのである。
地面から三四尺ほか上って居ない所にあるそれ丈の隙間は、明るい部屋の中をのぞくに充分である。
私は何だかそこが気になった。
どうやら眼玉がギラついて居そうでやり切れない。そこで私は、目をつぶる様にしてぴったりと其処を押えつけて、本を重しにかって置いた。
けれ共、間もなく振返って見ると、パクーンと又口を開いて居る。
これではどうもたまらない。
私の強さは、もうちょんびりぼっちほか残って居ない様な、情ない有様になって来る。
燈を消そうかとも思わないではなかったけれ共、うす暗い部屋の中に、ポツネンと滅り込みそうになって居なければならない事を思うと、又それもいやである。暫くの間、カーテンの隙間ばかりを気にして居た私は、じいっとして居るよりは、まだましだと家中のしまりを見廻り出した。
しっかりしまって居る戸まで、泥棒はきっと斯んな手付きでやるのだろうと思って、わざわざこじって見たり引っぱって見たりした。
そして、そうやっても動かなければ私は安心したけれ共、少しでも隙が出来たり何かすると、弟共の机
前へ
次へ
全15ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング