、私はすっかり神経質になり、強さが引っこみかかった様な様子になって仕舞ったのである。
 地面から三四尺ほか上って居ない所にあるそれ丈の隙間は、明るい部屋の中をのぞくに充分である。
 私は何だかそこが気になった。
 どうやら眼玉がギラついて居そうでやり切れない。そこで私は、目をつぶる様にしてぴったりと其処を押えつけて、本を重しにかって置いた。
 けれ共、間もなく振返って見ると、パクーンと又口を開いて居る。
 これではどうもたまらない。
 私の強さは、もうちょんびりぼっちほか残って居ない様な、情ない有様になって来る。
 燈を消そうかとも思わないではなかったけれ共、うす暗い部屋の中に、ポツネンと滅り込みそうになって居なければならない事を思うと、又それもいやである。暫くの間、カーテンの隙間ばかりを気にして居た私は、じいっとして居るよりは、まだましだと家中のしまりを見廻り出した。
 しっかりしまって居る戸まで、泥棒はきっと斯んな手付きでやるのだろうと思って、わざわざこじって見たり引っぱって見たりした。
 そして、そうやっても動かなければ私は安心したけれ共、少しでも隙が出来たり何かすると、弟共の机
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