た。それから、自分の直接責任である維持会員からの入金工合と、雑誌刊行の状況について、詳しく説明した。この四月以来紙代や印刷代が騰《あが》って写真の多い雑誌の経営は逼迫して来ているのであった。
 協会の事業を縮小するか、逆に積極政策でのり出すかということが決定されるきょうは重大な会で、会計報告がされたとき、
「こんな小っぽけな団体で、人件費が案外かかっているんですな」
と云ったものがあった。ノートをとっていて道子は顔を動かさなかったけれども、覚えず呼吸が速くなった。雑誌の編輯全部をやって広告とりまでして、道子の月給は五十円である。それは貰いすぎているといえる金額であるだろうか。千鶴子は二十五円である。千鶴子を入れるとき、常任幹事は半分本気で、
「文化学院あたりの卒業生かなんかなら、手弁当でもいいっていうのが相当いるんだろう。一つそういうのをめっける位の手腕があって然るべきだね」
と云った。道子はそういう娘たちにタイプを打つのは少いからとがんばって、千鶴子を入れることを承知させたのであった。工場でも役所でも、きりつめるというと人件費に目をつける、そのことではここも同じなのであった。会長が創
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