ることが出来たのである。すべての自分の持つ才能と同じに――否、すべての才能より真先に、愛は最高の練磨を受けなければならないはずであったことを、からくも今知ったのであった。
「宇宙に対する完全なる知と、神に対する完全なる愛とは同一不二である」
という言葉を読む。まったくそうであろう[#「あろう」に傍点]。そうであろう[#「あろう」に傍点]という心持を一層強められる――
そうあるべきものだが、自分には分らない。自分のものになるものは、まだあまり遠い彼方にある、
という心持である。神の愛とは何か。
神の愛とは何か、人類の愛とは何を意味しているのか、
「非常に深い河は地下を流れる」
という同じ人の格言通り、彼女の霞んだ、近眼が見るには可哀そうなほど、深い深い奥にその解答はあるのである。
彼女は、おぼろながら、それを自覚した。もう言葉の、魅力や完全さは望まない。それを自分の胸に感じ、魂に知り、ちょうど疲れたとき、一瞬の虚無に脳を休めるため知らず識らず深い欠伸《あくび》をするように、必要であり、適当である場合には、知らず識らず、自分の中から溢れ出すものとなりさえすればよいのである。
人
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