地は饒なり
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)愛嬌《あいきょう》のある
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)青|蜘蛛《ぐも》が張りわたしている
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)[#ここから3字下げ]
*入力者注だけの行は底本に挿入したもの、行アキしない
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一
[#ここから3字下げ]
或る日、ユーラスはいつもの通り楽しそうな足取りで、森から森へ、山から山へと、薄緑色の外袍を軽くなびかせながら、さまよっていました。銀色のサンダルを履き、愛嬌《あいきょう》のある美くしい巻毛に月桂樹の葉飾りをつけた彼が、いかにも長閑《のどか》な様子で現われると、行く先々のニムフ達は、どんなことがあっても見逃すことはありません。おだやかな心持のユーラスは四人の兄弟中の誰よりも、皆に大切にされ、いとおしがられていたのです。
陽気な、疲れることなどをまるで知らないニムフの踊りの輪から、ようようぬけた彼は、涼しさを求めて、
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