類の愛、神の愛。それは自分が、自分達すべての仲間に感じなければならない生活の根本になる理解であり、万物の生死を司り、この惑星の微妙な運行と変化とを支配している力への、持つべき根本の理解である。
「夢ではない。物語りの幻でもない」
汝の、曇らざる眼を見開け!
彼女の心の前には、「奕々《えきえき》たる美」に、燦然と輝きながら、千年の地下の眠りから呼び覚まされたアフロジテの像に、静かな表情でコンパスと定規をあてて
「……私は切に知りたいのですから……」
と云った人の姿が尊く浮み上った。ほんとに、舌を持つほどの者は、「知りたいのです」という言葉だけは知っている。
彼女は、知らなければならない欲に燃えた。そして、彼女の知る最上の手段で、僅かずつもそれは、満たされつつあるのである。
あの、「地下を流れる河」は、もちろん、その反響さえも、彼女までは伝えないけれども、彼女が永い間、鼓舞され、愛護されていると思った、「守霊」は違った解釈を与えられなければならなくなった。
第一に、守霊は、その名が示しているような任務を負わさるべきではなかった。
個人的に自分の霊の番をしているような、そんな狭小
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