だけ多勢群れている方へと、向う見ずに走って行くような人ではなかった。
 ほんとに小さな者の前で、急に膨れ上るかと思うと、真に偉くもない、ただ偉そうな外見ばかりの者の前へ出ては、針の先ほどに縮まって声も出さないような人達ではなかった。
 けれども、どんな些細なことをも感じ驚異し得る非常に微妙な感情をもって、一粒の涙も、見えるか見えない微笑をも見逃すことはなかった。
 彼女は、一つ一つあげていても限りのないほどいろいろの、立派な「点」を知った。ひとりでに頭が下らずにはいられない尊い心の「点」を感じることが出来た。
 けれども、却って、偉い人格という、漠然と心に出来ていた型はくずれて、無辺在な光明の微分子のうちに溶けこんでしまうのを感じたのである。
 無辺在な光明……。
 ほんとに彼女は、もう「偉い人というものは」などという言葉で考えたり探したりしていることは出来なくなってしまった。
 偉大な人々の、実に数えきれないほどたくさんのそれ等の美点と美点とが、変化窮りない自由さと、力とにおいて、結合し、融合したときに発する光明の連続が、今、自分にこのような感動を与える。彼女は、彼等が、ただ正直な人
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