とき、ユーラスは、もう息もつけないような心持になりました。
天鵝絨《ビロード》のように生えた青草の上に、蛋白石《オパール》の台を置いて、腰をかけた、一人の乙女を囲んで、薔薇や鬱金香《チューリップ》の花が楽しそうにもたれ合い、小ざかしげな鹿や、鳩や金糸雀《カナリヤ》が、静かに待っています。
そして、台の左右には、まるで掌《てのひら》に乗れそうな体のお爺さんが二人、真赤な地に金糸で刺繍《ししゅう》をした着物を着、手には睡蓮《すいれん》の花を持って立っています。あたりには、龍涎香を千万箱も開けたような薫香に満ち、瑪瑙《めのう》や猫眼石に敷きつめられた川原には、白銀の葦《あし》が生え茂って、岩に踊った水が、五色のしぶきをあげるとき、それ等の葦は、まあ何という響を立てることでしょう。
胡蝶《こちょう》の翅《はね》を飾る、あの美くしい粉ばかりを綴ったように、日の光りぐあいでどんな色にでも見える衣を被って、渦巻く髪に真赤なてんとう虫を止らせている乙女は、やがてユーラスの見たこともないライアをとりあげました。
そして、七匹の青|蜘蛛《ぐも》が張りわたしている絃を掻き鳴らし始めると、二人のお爺さ
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