の心事に見出そうとするように、私共が、或る国民の生活を観察する場合、漠然となりとも正鵠を得た、民族的気質を知らなければいけないと思うのです。
 それなら、米国人は、どんな気質、性格を持っているでしょうか。
 先ず、彼等が箇人主義的な生活をしていると云うことは誰でも申すことです。又、独立的気風に富んでいること、公衆道徳の進歩した国民、終りに驚くべき物質的であると云うのに、恐らく皆の意見は一致しますでしょう。
 如何にも米国人は箇人主義的な国民だと思います。独立的で、同時に今度欧州の大戦に参加してから彼等自身をも驚かした程の一致力を有し、各自が利害に明かで、着々と得るべきものは精神、物質両面ながら獲得して行きます。
 けれども、ここに考えなければならないことは、米国人は、箇人主義と云う一つの主義の上に、意識して彼等の生活を築きあげたのでもなく、又、独立的であるべきと云う道徳的訓練の後に、今日の気風を産み出したのでもない、と云うことです。
 箇人主義と云う思想上の一名詞が考え出されない以前から、既にアメリカ人の生活は、箇人箇性を基本に置いたものであった。アメリカが植民地時代から、独立的気風は
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