ら向って行きます。そこに、アメリカ人の実に自由なよい処と、又、実に堪らない俗臭とがある訳ですが、親が、子供を、或る年齢で一人前と認め得ることを理想として育てる処はよいと思います。
幼年時代から、両親は彼等の能う最大限の愛と努力と研究とで、徐々に、一箇の人としての基礎を子供等に与えてやる。学校は、広い常識と箇々の性格による専門的傾向を暗示する。そして、或る者は丁年になった時を、或る者は専門教育を終了した時を、新たな独立的生活の第一期と定め、それからは、生活方針を完く子等自身の意志によって支配させます。成長して子等も一箇の人間として立ったと云う感銘[#「感銘」に傍点]は、著しく我国に於けるそれとは強度を異にしているように感ぜられます。
或る年になれば、親子は、完全に同等になります。自分を胎のうちから愛し育てて呉れた者と云うつきない愛、信頼によって、他に比類ない深甚な友愛によって結ばれた横の関係となるのです。何歳になっても、親子、と云うやや階級的な段ではありません。もう、親は親の信念、子は子の信念で生活すべきもの、そして、その結果は、相互を結ぶ友愛から全く各自に責任を負うと同時に、互に苦
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