由に放して、自分は自分の為すべきことに没頭出来る設備になっています。
 丁度、朝十一時頃から午後三時頃まで、日当りの心持よい公園の広場を通ると、私共はよく、ときの声を挙げて悦び遊んでいる子供等の一群と、傍のベンチで、本を読み、編物、小さい縫物、又は不便そうに身を屈めて手紙まで書きながら付添っている保姆、母親を見受けます。
 戸外からは、まだ暖いうちに連れ戻って、体を洗ってやり、大人より早い晩食をとらせ臥床に入らせる。少くとも、夜間だけは、母親の時間、両親だけが、彼等一日の仕事をまとめ、或は悠くりと楽しみ休む時間になるのです。五つ六つになり幼稚園に通う頃になると、子供は次第に、独りで物事を処理することを訓練されます。友達同士の子供の社会で、一人だちで行為することを許されます。若し通路に危険がなく、公園にでも近ければ、子供は独りで一定の時間まで遊ばせられる。朝顔を洗うこと、挨拶すること、自分の着物を出来る丈自分で始末して、玩具や靴、帽子等に対して責任感を持たせられる。小さいながら、年相当一人の紳士とし、又は淑女として、両親の教育は次第に理智的、実際傾向を加味して来るのです。
 可愛ゆいと云
前へ 次へ
全37ページ中32ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング