的結合と云う点にだけ強調して、互の事業を完成させる為、又は、互の精神的肉体的欠点を後代に遺伝させない為、全然子供を期待しないもの。
最後に、非常な下層民で、生活の機能、人格価値などに対してはまるで無知なものが、熾烈な本能に身を任せて、乞食のように暮しながら無数な子供を産んで行く一群。一方それとは全く反対に、有り余る金はあり、子供の教育に責任を負うに充分な丈の健康と知能とは持ちながら、所謂自由が味えない為、容色が衰えるなどと云う恐怖から、無良心に科学の発達を濫用する者の一群になると思います。
抑々《そもそも》、産児制限などと云う問題は、総論として一朝一夕に可否を断定し得ないものではありますまいか。それを現在の社会状態に鑑みて是とする者、愛国主義、或は軍備主義の尊重から、国家滅亡論として極端に拒絶する者。又、実際、それに対する箇人の道徳的意識が深正でない場合には、多くの誤りが行われることも事実でしょう。私は、ここでその一般論をとやかく云い度いとは思いません。斯様なことは、最も箇人的な、最も深い人生価値批判の後に解決されることと信じ問題としては各人の宿題にしたまま、先ず進みましょう。
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