の独立した車輪です。どちらも一箇として生存し得ない不具品ではない。おのおのの特性を少しも失うことなく、而も友情と云う強靭な調帯によって、結果に於ては二人ながら希望する目的に向って、共同作業を営んでいるのです。
 ここに於て、必然子供の出生と云うことに就ては、多くの場合、明かな意識が加えられて来ます。日本のように、結婚すると間もなく、両親の精神さえ鎮まらないうちに、只管子供の為に忙殺されてのみ日を送るような生活ばかり[#「ばかり」に傍点]を、彼等はよしとしていません。子の為と云うより先に、まず親達が、二人の人間として充実した力と活動とを自分等の為に、要求する者が多い。従って、幾百万あるか分らない結婚者の子供に対する態度は、実際に於て、大体次の三様に分れているのではないかと思います。
 第一、結婚した両性の生活として、親になってこそ始めて使命の完うされるものであると云う立場から、幾人であろうとも生まれ出る子等を、しんから悦び迎える者。根本の立場は同じであっても、経済的事情、健康状態を考慮して、二人三人、質に於て最も優秀な子供を持ちたいと希望する者。
 第二は、結婚生活を、全く当事者間の箇人
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