、兆の狂暴を吐出すか後で判ろう。呪いの鬼子、気違い力の私生児、入れ! 入れ!(ヴィンダーブラの袖を引張り)見てくれ、俺も老いまい? 粉のように飛んで、光のように、人間共にからみつく、あの――
ヴィンダー 仕事は分担だ。騒ぐな。
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ところへ、カラ、駆けて来る。
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カラ ああ、貴方がた。――その様子では、私の虫の知らせが当ったかしら。
ミーダ 愉快なことが起ろうとしている。大地の神が動き出すのだ、人間共の生意気な組立細工の滅びる時が目の前に来た。
カラ 何と云う嬉しさ!――薄穢ない獏奴の食いさしを拾って来たのじゃあなかろうね。私は、もう飢えと渇きで死にそうになっていました。
ヴィンダー 誰が知らせた?
カラ 誰も。(狡く)ただね、私が宮を出ようとすると、天の伝令が一人、影のようにすうっと饗宴の物かげに入りました。間もなく、又その影の影のように、慈悲の女神が、宮を出て消えました。ね? あの女神が左からゆけば、きっと右手に私の場所がある。
ミーダ さすがだ。――然し、此処で展望はきかなくなって来たぞ。

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