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ミーダ 何だ? 皆の足音でもするか?
ヴィンダー(熱心に)違う! 遽《あわただ》しい、わくわくした、嵐のような歓びのそよぎだ――ほら! 来るぞ。来るぞ。
ミーダ(同じく注意し)成程。此方に向って翔んで来る羽搏きの音が風を切って迫るな。――やあ、見ろ、俺達の奴《やっこ》どもだ!
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宮の柱激しく揺れ、その間からヴィンダーブラ、ミーダの使者一、二、翼を持ち、黒鉄の鱗片で鎧った姿を現す。
[#ここで字下げ終わり]
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使者一 御注進です! 吉報を齎したお賞めの言葉を先ず下さい。
使者二 悦び、悦び! 悦び※[#感嘆符二つ、1−8−75](バサバサ羽搏き。)
ヴィンダー[#「ヴィンダー」は底本では「ヴンダー」] ミーダ(一緒に)云え! 何事だ?
使者一(小声で早口に)大地の神が眼を覚まそうとしています。
今朝人間界に舞い下りて、彼方此方ぶらついていると、大地の神の衣の襞の海水が怪しく震えているのに目がつきました。
使者二 私共は素早く、馬鹿正直の翻車魚《まんぼう》を捕えました。彼奴《あいつ》は、見ないことを云え
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