て挨拶をした。妙に暖かいような他愛ない魔気が襲いかかって、危く、何より大敵のにこにこ笑いに捕まりそうになったが。――彼処はいけないよ。油断がならない。
ヴィンダー が、まあ此処《ここ》まで来れば、其の心配もないと云うものだ。――どうれ!(第二の天の宮の真中に仰向きにたおれる)縮んだ惨めな筋肉ども! 延び拡がって活気をつけろ!
ミーダ(ヴィンダーブラの傍に胡坐《あぐら》を組んで四辺《あたり》を見廻す。)誰も未だ帰っていないな。
ヴィンダー 俺達のように、意志の明白な者はいない証拠だ。い辛いのに、弱気で堅くなっているんだろう。天帝に媚びれば、仕事が殖えるとでも思っているなら愚の骨頂だ。
ミーダ ――……森としているなあ。何だか四辺ががらんとしすぎて、いつもなら聞えない第一天の物音が、つつぬけに耳の穴へ忍び込みそうだ。カラでも早く帰って来ればいいのに。
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二神暫く沈黙。彼等の宮を支えている雲の柱が静に、流れ移ったり、照る光がうつろったりする。やがて
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ヴィンダー ああ、つまらない。(欠伸《あくび》をす
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